お坊さん日誌
お坊さんが綴る、普通の話
雨
2016.10.22
「予定とは儚い」
何ヶ月も前から楽しみにしていたイベント。花火大会、BBQ、山登りなど、私たちは「予定」という技を駆使して、自分の時間を拘束する。その力とは半端なものではない。偉い上司からのお誘いも、この予定の魔法でひらりとかわす。日頃、仕事では一歩も譲らない上司でも、「家族との予定が」とくると引き下がってしまう。そもそも「予定」とは、字のごとく、予め(あらかじめ)定めて(さだめて)おくという意味。予め定めていた計画には、誰も太刀打ちできないという暗黙の掟が存在する。
しかし、この予定に永遠のライバルがいることをご存じだろうか。
それは『雨』だ。
予め定めていた予定を、予め定めていたわけでもない雨が襲う。そうなった時の予定は儚い。花火大会は延期、BBQは中止、山登りは駐車場待機。そう、予定が狂ったのである。あれほど頑なに守り続けた予定がもろくも崩れた瞬間だ。人々は雨を恨み、口々にこう言う「楽しみにしてたのに」。
仏教の開祖お釈迦様は「過去に悩まず、未来に期待せず、現在に生きている。よって穏やかなのです」と説いておられる。
今日は、我が家は子どもの人生初、遠足の日であった。公園でお弁当を食べることを子どもも楽しみにしていたようで「おべんとう?おべんとう?」と何度もママに尋ねていた。無情にも保育園からは前日に中止の連絡があっていた。夫婦で「お寺遠足」をしようと決めた。御本尊様の前でお弁当を親子で食す。きっと喜んでくれるだろう。
予定とは儚い。
だが、儚く散った予定は、日頃気づかぬ小さな幸せに気づかせてくれる。
それを教示してくれる師匠は雨だ。
ありがたいこと。
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